目次
例文
[For months my life was despaired of, and when at last I came to myself and became convalescent, I was so weak and emaciated that a medical board determined that not a day should be lost in sending me back to England.]
引き続き『緋色の研究』です。
単語の意味
・despair(dɪsˈpeə)=絶望する・諦める(自動)
・convalescent(ˌkɒnvəˈlɛsnt)=回復期にある患者(名)
・emaciate(ɪˈmeɪʃɪeɪt)=~をひどく痩せさせる(他動)
構造
[For months my life was despaired of, and when at last I came to myself and became convalescent, I was so weak and emaciated that a medical board determined that not a day should be lost in sending me back to England.]
『構造』はとても単純です。
文法事項
[so ~ that]構文
受験でもかなり有名な構文です。
この構文は見抜けなければなりません。
自動詞の受動態?
[despair]は、“~が絶望する・諦める”という意味で、自動詞です。
[my life was despaired of ~]では、[despair]は受動態(受身)になっています。
通常、自動詞は受動態になりませんが、この文では、自動詞の[despair]が受動態になっています。
何故でしょうか?
自動詞はなぜ受動態とならない?
まず、何故自動詞は通常、受動態にならないのでしょうか?
受動態の作り方を理解すれば、何故自動詞が受動態となれないのかが分かります。
[She kicked me.]
を受動態にすると、
[I was kicked by her.]
となります。
図示すると、次のようになります。
この図を見ていただくと分かると思います。
要するに、
目的語の[me]が主語[I]になり、
動詞は[be + kicked(過去分詞)]となり、
主語の[She]は、[by her]
と変化して受動態が作られます。
能動態は、
通例、「動作主+行為+目標」という関係(安井稔『英文法総覧 改訂版』(1996年、開拓社)299頁)
を示します(色付けは真栄里)。
この能動態を受動態にすると、
「目標+行為+動作主」(上記安井299頁)
となります(色付けは真栄里)。
このことから、受動態は目標(つまり目的語)を必要とする動詞である必要があります。
目的語を必要とする動詞とは他動詞のことですから、受動態になることができる動詞は他動詞ということになります。
自動詞[despair]はなぜ受動態になっている?
今回の文では、自動詞[despair]が[was despaired]と受動態になっています。
なぜでしょうか?
今回の文をよく見てましょう!
[my life was despaired of, ~]
となっています。
赤字で示した[of]がポイントです。
[despair of ~]で、“~に絶望する・~をあきらめる”という意味になります(Genius 5th)。
「~に・~を」とあることから分かるように、他動詞と同じ機能を果たしています。
[my life was despaired of,]
を能動態に戻すと、
[I despaired of my life.](動作主(I)+行為(despaired of)+目標(my life))
となります。
[my life]が[despair of]の目的語として扱われています。つまり、[despair of]は他動詞として機能しているのです。だから
[my life was despaired of, ~]
という文は、正しい受動態となります。
和訳
直訳調
私の命が絶望的であった数カ月間、そして、ついに意識を回復し、回復中の患者になったとき、私は大変弱っていて、ひどく痩せていたので、医療当局は、決定した、一日が失われるべきではない、私を英国へ送り返すことに。
もう少し自然な日本語
生死の境をさまよっていた数カ月間、ついに意識を取り戻し回復に向かっていた頃、私は大変弱っており、ひどく痩せていたので、医療当局は、私を英国へ送り返すのに一日も猶予はない、と決定した。
今回のポイント
今回のポイントは、1点です。
1 自動詞はなぜ受動態とならないのでしょうか?
→受動態の作られ方に注意!
---緋色の研究–12–終---